こんにちは、Chakraです!
航空学生三次試験の舞台、防府北基地で私は初めてT-3練習機の操縦桿を握りました。
しかし、憧れの空は予想外の試練の連続。まさかの“飛行機酔い”に悩まされ、試験どころか空を飛ぶことすらつらくなる展開に。
それでも、逃げずに立ち向かい続けた2日間。
4回の実機フライトの中で起きた“奇跡の変化”、そして最後には夢に見たアクロバット飛行!
「空の適性」と「自分の限界」に向き合った、リアルな記録をお届けします。
午前の試験後、絶望の昼休み
昼食時間。正直、食欲はまったく湧きません。
水がかろうじて喉を通るだけで、胃のごろごろとした感覚がずっと残ったまま。朝のあのワクワク感は、すっかり影を潜めていました。
「さっきのフライトを、またやるのか…」
そんな弱気な思いが頭をよぎります。
それでも、時間は待ってはくれません。 午後のブリーフィングが始まり、教官の説明に耳を傾けながらも、心の奥底はざわついていました。
「また酔ってしまったらどうしよう」 「教官に呆れられたら…」
そんなネガティブな思考ばかりが、次から次へと湧いてきます。
体調に加えてメンタルの揺らぎも重なり、気持ちがどんどん狭くなっていく感覚。 まるで心が上手く呼吸できていないような、不安定な状態でした。
2回目の午後のフライトへ
不安と緊張を抱えながら迎えた午後の2回目のフライト。
T-3のコックピットに乗り込む瞬間、手袋の内側にはじんわりと汗がにじみ、タクシー中のわずかな振動でさえ「再び空へ向かうのだ」という実感を強く突きつけられました。
離陸すると、昨日と同じように身体がふっと浮き上がり、あの広大な空の世界が再び目の前に広がっていきました。
しかし意外なことに、操縦操作そのものは驚くほど落ち着いて行うことができました。 スティックを握る手にも無駄な力は入らず、計器の数値を一つひとつ確認しながら、課された課題に丁寧に取り組んでいきました。
「いけるかも…?」という気持ちが芽生え始めていました。
ところが、その安心感は罠でした。
最後の局面で、再び胃のむかつきがぶり返し、視界もじわじわと狭まっていきました。 呼吸も浅くなり、気づけば他の候補生よりも早く着陸する羽目になってしまいました。
「やはり、自分には向いていないのかもしれない…」
そんな思いが、じわじわと胸を締め付けてきます。
宿舎のベッドで立ち返る“原点”の想い
その夜、宿舎で布団の中に潜りながら、色々なことを考えていました。
「自分は、何のためにここまで頑張ってきたのだろうか…」
思い出すのは、助けてくれた友人、担任の先生、そして両親。自分が迷いそうなとき、側にいて応援してくれた人たちの顔が浮かびました。
その人たちの想いに、しっかりと応えたい。
「こんな飛行機酔いごときで、諦めてたまるか!」
自分にそう問いかけました。
あの時に見た「飛び込みたくなる雲海」「ブルーインパルスを見上げて心を奪われたあの気持ち」
それを胸にここまで来たのに、なんだこのネガティブな感情は!
ベッドの上でそんなことを考えている間に、意識がストンと落ちました。 夜更かしが常だった高校3年生の、珍しく深い眠りでした。
翌朝の変化|3回目のフライトで奇跡が起きた
明け方、目覚めたときの私は、昨日とは別人のように落ち着いていて、なぜか心は穏やかでした。
「もう考え込んでも仕方がない」
どんな結果になろうと、やるしかありません。 むしろこの限られた時間の中で、少しでも「自分らしいフライト」ができたら、それで良いのではないか。
そんな気持ちのまま迎えた3回目のフライト。
朝の空気は澄んでいて、T-3のエンジン音がやけに心地よく感じられました。 離陸後すぐ、体がふわっと持ち上がる感覚があるものの、昨日のような胃の違和感はありませんでした。
「おっ、今日は行けそうだぞ…?」
適性検査が始まります。前席の教官から「では、上昇旋回をやってみようか」
私は「I HAVE CONTROL」と答え、スティックを軽く右に倒します。 そして、旋回しながら少しずつ高度を上げていきます。
「なぜだ?今回は酔ってないぞ」
順調に過ぎる時間に、自分でも不思議でした。
視界の中に山の稜線や瀬戸内の海が入り込むと、その素晴らしい風景に見惚れる余裕すらありました。
「空を飛んでいる」そんな実感が全身にみなぎってきました。
自信とまではいかないものの、「今までの努力が報われた」と感じられた3回目のフライトとなりました。
最終フライト|アクロバット飛行に挑戦?
いよいよ迎えた、4回目最後のフライト。
このフライトの最後には、特別な“ご褒美”として、アクロバット飛行を体験させていただけると聞いていました。
午前のフライトで酔わなかった私は、迷うことなく「ぜひ挑戦させてください!」と教官に申し出ました。
教官は少し驚いたような表情を浮かべながらも、にっこりと笑って「じゃあ、楽しもうか」と声をかけてくださいました。
T-3に乗り込むとき、これまでとは違う気持ちが胸にありました。
「ここまで来たんだから、悔いのないように」 そんな気持ちが自然と込み上げてきました。
離陸してしばらくは、いつも通りの適性検査。
指定された旋回や水平飛行、上昇・降下をこなしながら、できる限り丁寧に操縦を行いました。
この頃には、T-3の操縦にもある程度身体が馴染んでおり、操作中にもほんの少し心の余裕が感じられるようになっておりました。
そして、最後のご褒美タイム
「じゃあ、アクロやろうか」
教官のその一言に、思わず背筋が伸び、久しぶりのワクワク感が湧いてきました。
次回予告
飛行機酔いと戦いながら、ついにたどり着いた4回目のフライト。
憧れ続けたアクロバット飛行、その結末は?
そして、運命の合格発表へ!
次回は、空への挑戦がひとつの区切りを迎える、胸熱の展開をお届けします。
おまけ|航空学生応募開始
いよいよ7月1日から、航空学生の応募が開始されます。
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