19歳の私を変えた人 ― F-4ファントムの背中を追って

19歳の頃、人生を変えるほどの衝撃を与えてくれた人がいます。

その人こそ、F-4ファントムのパイロットであり、航空学生時代の区隊長 ― アイアンさん

厳しさの中に、誰よりも深い優しさを持った人。
そして「空を守る」という使命を、背中で教えてくれた人でもあります。

F-4戦闘機部隊からやってきた区隊長

写真に写っているのが、アイアンさん。
航空学生2年生の区隊長、いわば担任のような存在です。
バスケットボール部の顧問でもありました。

F-4ファントムの部隊からやってきた区隊長。
190cmを超える体格に、まるでアメリカ人のような雰囲気。
圧倒的な存在感とパワーで、毎日が挑戦と学びの連続でした。

ものすごく厳しく、時には怖いほどの迫力。
でも、その奥には誰よりも深い愛情がありました。

「強さ」と「優しさ」を両立した、本物のリーダー。

そんな人のもとで、私たちは鍛えられていくことになります。

「負けは絶対に許されない」信念

アイアンさんといえば、まずその強い信念

「勝負ごとでは絶対に負けるな。パイロットが負けることは許されない

訓練でも、競技でも、どんな場面でも常に本気。
学生たちを鼓舞する声が、グラウンドや体育館に響き渡っていました。

航空学生の様々なイベントは、3区隊対抗の真剣勝負。
学生たちは負けないために、必死に走り、必死で泳ぎ、互いを励まし合いながら「勝利」という目標に全力疾走です。

当時は「こんなことをしてパイロットになれるのか?」と思うこともありましたが、今振り返ると、パイロットとして大切な要素をたくさん養う期間だったのだと思います。

「国を守る」というのは、ただ戦うことではない。
日々の訓練の中で、自分自身に負けない強さを磨くことなのだと。

厳しさの奥にある、海のような優しさ

厳しい訓練の毎日。
怒鳴られることも、悔し涙を流すこともありました。
毎日が極限の中での挑戦で、肉体だけでなく心も試される日々。
それでも、心の底では全員が知っていました。

「この人は本気で俺たちを信じてくれている。」

その信念が、私たちを支えていました。
強さの中に、どこまでも深い優しさがありました。

学生だけでなく、その家族まで思いやってくれる人。
一人ひとりの成長を見守るその目は厳しくも優しく、まるで父親のようでした。

そしてその優しさは、決して「甘さ」ではなく、本物の厳しさの中にある愛情でした。
厳しさは、相手の将来を本気で考えるからこそ生まれるもの。
時には言葉ではなく行動で、責任や覚悟を示す姿に何度も胸を打たれました。

本気で人を想うからこそ、叱り、導き、時に突き放す。

私たちは彼の背中を見て、人を育てるということの「本質」を学びました。
アイアンさんは、その生き方を通して、それを教えてくれたのです。

F-4への憧れ、F-15への決断

航空学生を卒業する頃、私はアイアンさんに相談しました。

「アイアンさんみたいに、F-4ファントムに乗りたいです!」

あのどっしりしたフォルム、轟く爆音、存在感。
すべてが僕の憧れそのものでした。

しかし、アイアンさんは真剣な眼差しで言いました。

「これからの時代は新しい飛行機に乗れ」

意外な言葉に驚きました。
これまでF-4に乗りたくて頑張っていた自分に衝撃が走るとともに、アイアンさんが言うから間違いはないのだろうと、自分の気持ちがスッと変化したのを今でも覚えています。

私はその瞬間、F-15に乗ろうと決意しました。

信じられないほどの豪快さ

そして忘れられないのが、その豪快さ。

学生たちと食事に行っても、アイアンさんは常に全員分の食事代を、すべて払ってくれていました。

20人、30人と学生が集まる中で、「今日はいいから、お前ら食え!」と笑うその姿。これが1回ではなく、何回も何回も。

僕たちはただ圧倒されながらも、「この人のような先輩になりたい」と心から思っていました。

誰にでもできることではありません。
でも、アイアンさんにとってはそれが当たり前です。

後輩への思いやりを、行動でも堂々と表現する、誰よりも後輩想いの方です。

人としての本質を教わった

このブログの1ページで伝えようとすること自体が、もしかしたら失礼にあたるかもしれません。
それほどまでに、アイアンさんから受け取ったものは大きすぎます。

仲間を大切にしろ。
最後まで絶対に諦めるな。

一人で勝っても意味はない。チームで勝て。
苦しい時こそ笑え。

言い訳は絶対に許さん。
パイロットは一つのミスが死に直結する。

そんな、人としての「躾」を学びました。

今の時代では、少し古いと言われるかもしれません。
けれど、私は信じています。
人としての本質は、今までもこれからも変わらない。

本当の優しさは厳しさの中にあります。
馴れ合いからは何も生まれない。


この思考は今でも強く、心の中に刻まれています。

さいごに

アイアンさんの教え、言葉、背中。
すべてが、今も私の人生の基準になっています。

190cmの大きな体に、
それ以上に大きな心を持った人。

厳しさの裏にある愛情、
勝負に負けない信念、
そして、海のように深い優しさ。

私の生き方の原点です。

このブログを通して伝えたいのは、
本当に大事なことは、時代によって変わらないこと。そして、国を守るという使命の中で生きる人たちの素晴らしさ、そしてその想いの尊さ。

私が心から尊敬してやまない、本当にすごい人。

鉄人、アイアンさん。
いつもありがとうございます。