【ブルーインパルス】コークスクリューは難しいですか?(後編)

こんにちは、Chakraです!

前回のブログでは、小学生からの「コークスクリューは難しいですか?」という素朴ながら鋭い質問をきっかけに、ブルーインパルスの人気課目「コークスクリュー」についてご紹介しました。

6番機が5番機の周りを螺旋を描きながら飛ぶこの課目では、「一定の半径を保つ」ことが難しく、重力の影響を受ける各セクションでのスティック操作やロールのタイミングがすべてを左右する、非常に繊細な操縦が求められるという話をしました。

そして今回は、いよいよその後編。
「半径を保つ」以外に求められる、さらなるテクニックや難しさについて掘り下げていきます!

コークスクリューは「半径」だけじゃない?さらなる難しさに迫る

「えっ、コークスクリューって、まだ難しいところあるの?」と思った方。

あるんです!!笑

それが何かというと、

「前後のパワーコントロール」

では早速、その理由をわかりやすくお話していきますね!
どうぞお付き合いください。

コークスクリュー「前後のパワーコントロール」

「半径を保つ」以外に求められるもの、それは「前後のパワーコントロール」です。

「前後」とは、5番機と6番機の距離のことです。

そして実はこの距離感が、コークスクリュー全体の“見た目”を大きく左右するんです。

いつも素敵な写真を撮影する黒澤英介さんの写真↑↑

6番機が5番機から離れすぎてしまうと、最後のブレイクの瞬間に迫力が欠けてしまいますし、逆に近づきすぎると、コントロールが極めて難しくなり、5番機との距離も詰まってしまって非常に危険。

だからこそ、「一定の距離を保つ」ための細かな工夫と技術が必要なんです。

さて、そのポイントとは?

パワーを足すタイミングが遅れると…

下図は、前回の記事で「半径」について説明した際に使った図です。

その中で、「さらに、ここでGをかけすぎると、機体のエネルギー(速度)が落ちてしまい、5番機についていくのが困難になります。」と書きました。

特に重要なのが③のポイント。
ここはGがかかり始めるタイミングで、パワーをしっかりミリタリー(最大出力)まで入れておかないと、6番機は5番機からどんどん離れてしまい、追いつくことができなくなります。

正確には、「Gがかかる前」にパワーを足す必要があります。なぜなら、Gがかかり、速度が減少し始めたときにパワーを足しても手遅れだからです。

そのため、6番機はコークスクリューに入った瞬間から、ピッチとロールで正確に半径を保ちつつ、「いつパワーを足すべきか?」を常に考えながら飛行しています。

パワーを足すタイミングが早いと…

では逆に、パワーを足すタイミングが早すぎたらどうなるでしょうか?

そうです、前に出ます。では、前に出るとどうなるのか?

これは、危険な状態になります。

通常、コークスクリュー中の6番機の頭の向きは、およそ30〜45度前方を見ているのですが、前に出すぎると5番機を見るために頭を大きく振らなければならず、その分コントロールが格段に難しくなります。

コントロールが難しくなるだけではなく、5番機とも近づくので危険な領域となり、課目を中止することとなります。実際、私も訓練中は何度もABORT(中止)しました…

このように、コークスクリューでは「どのタイミングで」「どれくらいのパワーを足すか」が、非常に重要なポイントなのです。

夏と冬で変わる操縦感覚|季節ごとのパフォーマンスの違い

季節?どういうこと?と思いますよね。

ここを深掘りすると日が暮れてしまうので、ざっくりと説明します。

飛行機の性能は、「空気の密度」に影響を受けます。
夏の暑い日は空気が薄くなり、揚力やエンジンの効率が落ちてしまいます。
一方で、冬の寒い日は空気が濃くなり、飛行機のパフォーマンスは向上します。

つまりどうなるかというと、
夏は出力が落ちるぶん、パワーを早めに足さないと5番機から離れてしまう。
逆に、冬はパワーが効きやすいので、前に出過ぎないよう慎重な操作が求められるというわけです。

季節ひとつで、こんなに繊細な調整が必要になるんです。

観るだけじゃもったいない!知ればもっと楽しいコークスクリュー

いかがでしたか?

ダイナミックで迫力満点のコークスクリュー。観ているみなさんからも人気の高い課目ですが、6番機のコクピットの中では、実はものすごく繊細で緻密な操作が行われているんです。

次に航空祭などでコークスクリューを見る機会があったら、ぜひ今回のお話を思い出してみてください。きっと、これまで以上に奥深く、そして面白く感じてもらえるはずです♪

おまけ

今月号のJ-WINGで特集されている当時の隊長「WATT」さん(現松島基地司令)との一枚。

チャクラ、若いですね笑

この写真はありませんが、まだご覧になっていない方は、ぜひチェックしてみてください↓↓


コメント

  1. kayochan82 より:

    こんばんは。
    Wattさん、先日のバラエティー番組でのブルーインパルス特集で基地を案内されてましたよね?優しいおじ様になられてました。

    空気の密度が飛行に影響するのはHachiさん講座😅で教えて頂いていたのですが、ブルーは距離近く操縦するので更に難しいのでしょうね。T4は軽いから他にも色々と外部の影響を受けやすいと考えます。
    同じ技を見せて貰っても毎回コックピットでは密かな戦いが行われている事、胸に刻んでおきます💕
    大阪での展示飛行近づいてきました。行けないですが空自がアップしてくれる動画を楽しみにしています。晴れますように☀心からの祈りを込めて。 

    • Chakra より:

      コメントありがとうございます。
      飛行機の操縦は、気温や湿度であったり、飛ぶ高度(空気密度)によっても、大きくパフォーマンスが変化します。
      それを見ている方々に「気付かせない」のがプロであり、密かなやりがいであったりもします。
      本当に飛行機の操縦は面白いですよ~!